さっそく、光る試験管立ての設計をしていきます。
製作するものは前回のブログにもしめした、光る試験管立てです。
まずは、ブロック図を描きました。
試験管を、フルカラーLEDを用いて、カラフルに光らせたいと思います。フルカラーLEDは、Red Green Blueの三原色のLEDの明るさを調節することで、どんな色にも調節することが出来ます。また、光はそこそこ強い光を出したかったので、オプトサプライ社が出している、最大出力1WのハイパワーフルカラーLED(OSTCWBTHC1S)を採用しました。そのため、マイコン直結では電流が足りないため、NchのMOSFETを間に挟みます。
今回は、基板の面積をかなり小さくしなければならないため、極小のマイコン ATtiny202を使用しました。
ATTiny202の仕様を簡単にまとめました。これがなんと一個40円。破格の安さです。
・電源電圧:1.8~5.5V
・コア:tinyAVR
・コアサイズ:8bit
・命令長:16bit
・クロック:20MHz
・プログラムメモリ:2kB
・EEPROM:64B
・RAM:128B
・GPIO:6pin
・ADコンバータ:6Ch
・UART/USART:1Ch
・I2C:1Ch
・SPI:1Ch
・タイマ:2Ch(16bit×2)
・パッケージ:SOP8
メモリー容量は、2kBしかありません。テキスト文字だと3000文字程度でしょうか。とても少ない容量なので、書き込めるブログラムも単純なものしかできません。ですが、3色のLEDを光らせる程度であればこれで十分でしょう。
つぎに、LEDです。
LEDは、三原色が入ったフルカラーLEDを採用しました。
・標準電流:150mA
消費電力: 1W
・VF:
赤…2.5V
青、緑3.3V
・ΦV:
赤…22ルーメン
緑…35ルーメン
青…12ルーメン
・λD:
赤…624nm
緑…525nm
青…460nm
・2θ1/2:120°
出力電力は1W 。標準電流は150mAという高輝度。とてもまぶしいです。
まずは、回路図を書いてみました。
今回使用するLEDは、電流値がとても高いため、マイコンの出力端子に直接接続して動作させることは難しいです。
そのため、各LEDにはNチャンネルのMOSFETを接続し、制御できる電流値を増やします。
LEDの明るさはマイコンからのPWM信号によって調整します。
次にLEDの制限抵抗(R5,R8,R11)の抵抗値を計算します。
FETが完全にONになった場合、FETを省略して、回路は抵抗とLEDだけにすることが出来ます。
必要な情報は、LEDの標準電流と電圧です。
IF=150mA VF:赤…2.5V 青、緑3.3V
電源電圧からLEDのVfを引き算した値が、抵抗の端子間電圧になります。抵抗にも、LEDにも150mAの電流を流すわけですから、制限抵抗の抵抗値は、
青; R=V/I = 1.7V / 150mA = 11.33[Ω]
緑; R=V/I = 1.7V / 150mA = 11.33[Ω]
赤; R=V/I = 2.5V / 150mA = 16.66[Ω]
となります。
しかし、こんなぴったりな抵抗値の抵抗器はありませんから、E24系列に存在する抵抗値で一番近いものは、
青; 11.33[Ω]=10Ω
緑; 11.33[Ω] =10Ω
赤; 16.66[Ω] =15Ω になるでしょうか。
次に、この抵抗値を適用した場合の実電流を計算します。
青; 実電流 If [mA] = V/R = 1.7 / 10 =170 [mA]
緑; 実電流 If [mA] = V/R = 1.7 / 10 =170 [mA]
赤; 実電流 If [mA] = V/R = 2.5 / 15 = 166[mA]
この電流値が、LEDの定格電流以下であることをデータシートから確認します。
LEDの直流定格は、200mAであるため、余裕があります。また、本機はPWMのパルス制御をするため、PluseForward Currentを使用します。すると定格は250mA。抵抗の誤差分を考慮しても十分余裕があるかと思います。
実際は、FETの損失が加わるため、端子間電圧は低めに出るはずです。
次に、抵抗の損失を計算します。
青; 抵抗(青)の損失 Pr [W] = V * If = 1.7 V*170mA = 289 [mW]
緑; 抵抗(緑)の損失 Pr [W] = V * If = 1.7 V*170mA = 289 [mW]
赤; 抵抗(赤)の損失 Pr [W] = V * If = 2.5 V*166mA = 415 [mW]
となります。赤だけ損失が大きいですね、、、。
以上から、選定する抵抗は、0.5W定格以上のものを使用するのが良いかと思います。
次に、FETの選定です。
FETのドレインソース間には、最大で170mAの電流が流れているわけですから、それ以上のドレイン電流を流せる必要があります。金額や性能的に、BSS138を選びました。
・構造:MOSFET
・回路数:1
・チャネル:N
・ドレイン・ソース間電圧:50V
・ゲート・ソース間電圧:±20V
・ドレイン電流(DC):300mA
・ドレイン・ソース間オン抵抗:1.6Ω
・許容損失(25℃):350mW
・パッケージ:SOT-23
次に、FETの損失を求めます。
FETの損失をLTSpiceでシミュレーションしました。本当は、BSS138のSpiceモデルでできればよかったのですが、うまく追加できなかったので、RdsやVdsが近い値のFETでシミュレーションしました。
ここから、IdsとVdsを掛け算した、電力のジュール積分値は、44.49uJ
PWMのパルスは500Hzなので、500*44.49u = 22.24 mW
このFETの熱抵抗θjcは、350℃/Wです。
周囲温度25℃の場合のジャンクション温度は、Tj = 25+(350 ×0.02224) = 32.78 ℃。
最大電流でも、+7.78℃の温度上昇なので、あまり影響がないと考えます。
よって、この回路図で決定します。次は、これをもとに基板を設計します。ではまた。