今回から新企画です。
市販の製品を分解して、そこに秘められた技術を学びます。
今回は、AM/FMラジオチューナー、KENWOOD製のKTF5002を分解します。
これは、近所のハードオフで1500円で販売されていました。
ジャンク品だったのですがかなり状態がよく、FMラジオ、AMラジオ共に音も問題なく鳴っています。
FMラジオが受信できる
AMラジオが受信できる
まずは、このラジオについて調べてみました。
調べると、発売はなんと1997年ごろ。僕の年齢の一つ下です。
価格は25000円とお手頃価格です。
取扱説明書のpdfも上がっていたので下記にリンクを貼ります。
下記に仕様を示します。
FMラジオの受信周波数範囲は76MHz~90MHz。当時のFMラジオでは十分な帯域です。90MHz以上はアナログテレビの音声信号の帯域でした。現在は、この空いた帯域がAMラジオの補完放送(WideFM)になっています。
全高調波歪率は0.5% オーディオ機器としてはまずまずかなと思います。
個人的に驚いたのは、FMラジオのSN比が70dBであること。当時としてはかなり高い性能ではないかと思います。
また、AMのSN比は40dB。やはりFMよりノイズが多くなってしまうのがAMラジオです。
フロントパネル
Auto(自動選局)やスリープ、時間予約などの設定ができるみたいです。
パッと見ボリュームだと思いましたが、これは選局です。ぐるぐる回すことはできず、傾かせるだけです。
後ろはこんな感じ。FMのアンテナ端子、AMのアンテナ端子、オーディオ出力、コンセント、検波出力があります。FMのアンテナ端子はテレビのアンテナ線と同じものです。
それではカバーを外して中身を見てみましょう。
なるほど。複雑かと思いましたが中身は基板一枚に収まっていました。
さらに基板を取り出します。
ざっくりと、回路の名称を示します。
FMのフロントエンド、FMのマルチプレクサ、AMステレオの復調回路、PLL回路、電源回路等、多くの回路から成り立っています。今後のブログにて、これらの回路を一つづつ説明していきます。
今日は、分解したばかりですので、基板全体に着目します。
まず、基板の素材は、紙フェノール基板です。安価で耐久性はあまりありませんが、置き型のオーディオ機器ではこれで十分です。基板は片面一層構造で、部品は片方の面にしかついていません。そのため、線と線の交差のため、ジャンパ線が多く使われています。また、表面実装部品は、裏面についているマイコン(ぶ厚い、、)だけで、あとはすべてディスクリート部品です。部品の足が基板の裏で曲げられているところから、この部品はすべて人の手で手挿入されています。そして、人の手でカットしているのがわかります。
また、はんだづけに一切のムラがないことから、はんだ槽に基板をあてがう、フロー式ではんだ付けをしていることがわかります。マイコンだけは後付けでクリームはんだのリフローかもしれません。
正直これは、今の時代から見ると、かなり人件費がかかっているなと思います。
これを、25000円ぽっきりで売っているのはすごいと思います。
また、電源回路も注目です。
オーディオ関連の機器がやたら重いのは、電源回路にスイッチング方式を使わないからです。スイッチング方式の電源は、たとえば携帯の充電器やパソコンの充電アダプタなどです。このラジオも、スイッチングを使えば回路は軽くなりますが、スイッチングはノイズを多く発生させるため、とくにラジオの電源に使えばSN比は一気に下がります。そのため、大きなトランスを置き、昔ながらの電源回路で作るしかありません。
また、表示はVFDという表示方式です。よく、スーパーのレジで青白い文字で「ゴウケイ2350エン」って出てるアレです。今では液晶表示(電卓などの)や、LEDが多いですが、これは真空管の技術を応用した昔ながらの表示です。
これも、今後のブログで詳しく書けたらなと思います。
最後に、スイッチ類の裏側です。かなりシンプルでした。
今日は、ざっくり分解したレポートでした。今後は、下記の計画で、この製品をより詳しく分析していこうと思います。次回は、9/2にそもそもAMラジオ、FMラジオの受信原理について解説します。PLL、MPXの話も触れようと思います。
現在の連載; 「FM/AMステレオチューナーKTF-5002の分解調査」
更新日 | 題名 |
8/26 | KTF5002を分解してみた(仕様、解体手順、基板構成、機構について) |
9/2 | AM/FMラジオの受信原理(AM・FMとは、主に使われる受信方式について、PLL・MPXとは) |
9/9 | KTF5002で使用されているICについて調べた |
9/16 | FMフロントエンド回路、FM-IF回路、AM-RF回路 について |
9/23 | PLL回路の原理 |
9/30 | FM-AM DET回路について |
10/7 | FM-MPX回路について |
10/14 | Audio AMP回路について |
10/21 | 電源回路について |
10/28 | VFD表示回路について |