2021.8.26 KTF5002を分解してみた

今回から新企画です。

市販の製品を分解して、そこに秘められた技術を学びます。

今回は、AM/FMラジオチューナー、KENWOOD製のKTF5002を分解します。

これは、近所のハードオフで1500円で販売されていました。

ジャンク品だったのですがかなり状態がよく、FMラジオ、AMラジオ共に音も問題なく鳴っています。

FMラジオが受信できる

AMラジオが受信できる

まずは、このラジオについて調べてみました。

調べると、発売はなんと1997年ごろ。僕の年齢の一つ下です。

価格は25000円とお手頃価格です。

取扱説明書のpdfも上がっていたので下記にリンクを貼ります。

KTF-5002の取扱説明書

下記に仕様を示します。

 

FMラジオの受信周波数範囲は76MHz~90MHz。当時のFMラジオでは十分な帯域です。90MHz以上はアナログテレビの音声信号の帯域でした。現在は、この空いた帯域がAMラジオの補完放送(WideFM)になっています。

全高調波歪率は0.5% オーディオ機器としてはまずまずかなと思います。

個人的に驚いたのは、FMラジオのSN比が70dBであること。当時としてはかなり高い性能ではないかと思います。

また、AMのSN比は40dB。やはりFMよりノイズが多くなってしまうのがAMラジオです。

 

フロントパネル

Auto(自動選局)やスリープ、時間予約などの設定ができるみたいです。

パッと見ボリュームだと思いましたが、これは選局です。ぐるぐる回すことはできず、傾かせるだけです。

後ろはこんな感じ。FMのアンテナ端子、AMのアンテナ端子、オーディオ出力、コンセント、検波出力があります。FMのアンテナ端子はテレビのアンテナ線と同じものです。

それではカバーを外して中身を見てみましょう。

なるほど。複雑かと思いましたが中身は基板一枚に収まっていました。

さらに基板を取り出します。

ざっくりと、回路の名称を示します。

FMのフロントエンド、FMのマルチプレクサ、AMステレオの復調回路、PLL回路、電源回路等、多くの回路から成り立っています。今後のブログにて、これらの回路を一つづつ説明していきます。

今日は、分解したばかりですので、基板全体に着目します。

まず、基板の素材は、紙フェノール基板です。安価で耐久性はあまりありませんが、置き型のオーディオ機器ではこれで十分です。基板は片面一層構造で、部品は片方の面にしかついていません。そのため、線と線の交差のため、ジャンパ線が多く使われています。また、表面実装部品は、裏面についているマイコン(ぶ厚い、、)だけで、あとはすべてディスクリート部品です。部品の足が基板の裏で曲げられているところから、この部品はすべて人の手で手挿入されています。そして、人の手でカットしているのがわかります。

また、はんだづけに一切のムラがないことから、はんだ槽に基板をあてがう、フロー式ではんだ付けをしていることがわかります。マイコンだけは後付けでクリームはんだのリフローかもしれません。

正直これは、今の時代から見ると、かなり人件費がかかっているなと思います。

これを、25000円ぽっきりで売っているのはすごいと思います。

また、電源回路も注目です。

オーディオ関連の機器がやたら重いのは、電源回路にスイッチング方式を使わないからです。スイッチング方式の電源は、たとえば携帯の充電器やパソコンの充電アダプタなどです。このラジオも、スイッチングを使えば回路は軽くなりますが、スイッチングはノイズを多く発生させるため、とくにラジオの電源に使えばSN比は一気に下がります。そのため、大きなトランスを置き、昔ながらの電源回路で作るしかありません。

また、表示はVFDという表示方式です。よく、スーパーのレジで青白い文字で「ゴウケイ2350エン」って出てるアレです。今では液晶表示(電卓などの)や、LEDが多いですが、これは真空管の技術を応用した昔ながらの表示です。

これも、今後のブログで詳しく書けたらなと思います。

最後に、スイッチ類の裏側です。かなりシンプルでした。

今日は、ざっくり分解したレポートでした。今後は、下記の計画で、この製品をより詳しく分析していこうと思います。次回は、9/2にそもそもAMラジオ、FMラジオの受信原理について解説します。PLL、MPXの話も触れようと思います。

現在の連載; 「FM/AMステレオチューナーKTF-5002の分解調査」

更新日      題名          
8/26KTF5002を分解してみた(仕様、解体手順、基板構成、機構について)
9/2AM/FMラジオの受信原理(AM・FMとは、主に使われる受信方式について、PLL・MPXとは)
9/9KTF5002で使用されているICについて調べた
9/16FMフロントエンド回路、FM-IF回路、AM-RF回路 について
9/23PLL回路の原理
9/30FM-AM DET回路について
10/7FM-MPX回路について
10/14Audio AMP回路について
10/21電源回路について
10/28VFD表示回路について

 

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