2021.9.2 AM/FMラジオの受信原理について

・AMとFMの違いって何?

電波と言って思い浮かべるのは、ラジオやテレビの電波だと思います。しかし、電波自体は音声や映像を伝えることは出来ません。

電波に何らかの工夫を施す必要があります。

ここで音声信号と電波を合成する、変調という技法を用いて電波に乗せます。変調には、AMラジオ放送の振幅変調(Amplitude Modulation)、FM放送の周波数変調(Frequency Modulation)などがあります。

振幅変調は、搬送波(高周波)の振幅の上下を変化させる方式です。この方法は技術的に簡単で、古くから使われていますが、その性質上ノイズ(雑音)の影響を受けやすく、音質もあまりよくありません。

これに対して、周波数変調は搬送波の周波数を部分的に変化させる方法で、波形の疎密で合成します。音声信号の振幅が低いとき、送信波の波形は疎になり、高いときは密になります。

AMラジオの受信原理(包絡線検波)

AMラジオの受信原理は至ってシンプルです。受信電波の振幅がそのまま音声信号になっているわけですから、搬送波成分を取り除けばOKです。

AMラジオを、一番簡単に表した図を下図に示します。

これは、ゲルマラジオとよく呼ばれます。

 

アンテナには数多くの放送局の電波を受信します。

そのため、その中からほしい放送局を選定する必要があります。そこで、コイルとバリコン(可変コンデンサ)を並列につないだ共振回路を用意し、ほしい周波数以外の電波をカットします。

次に検波回路です。これは、ダイオードとコンデンサを使い搬送波の成分を取り除きます。

取り除いた結果、音声の成分だけが残るわけです。

この検波ダイオードはゲルマニウムダイオードを使うため、よくゲルマラジオと呼ばれています。

 

ストレート方式ラジオ

先ほど紹介したゲルマニウムラジオでは、感度も音量も小さすぎます。

そこで、一般的なAMラジオでは、同調回路、検波回路はほぼ同じ形の回路ですが、それぞれに増幅回路を挟みます。まず、感度を上げるために同調回路の出力に高周波増幅回路入れます。そしてより大きな音量で聴けるように、検波回路の出力に増幅回路を挟み、スピーカーでも聞けるようになります。

 

FMラジオの受信(スーパーヘテロダイン)

FMラジオで一般的なのは、スーパーヘテロダイン方式です。

これは、今度じっくり説明したいとおもいますが、下記に簡単に申し上げます。

スーパーヘテロダイン受信機の一番の特徴は,受信した信号を低い周波数帯に下げてから検波、復調をするという点です。周波数を下げることで,感度と周波数選択度を上げられるメリットがある.

周波数を下げるためには,下図のように,アンテナで受信した信号を局部発振回路で用意した高周波信号とミキサーで混合します。

すると、混合した波と、受信した波の差(うなり)の周波数が発生します。

このうなりを抽出し、検波(FMの電波を音声に変えること)をすることで、安定して高音質なラジオが出来ます。

今日は、ここまで。

2021.8.26 KTF5002を分解してみた

今回から新企画です。

市販の製品を分解して、そこに秘められた技術を学びます。

今回は、AM/FMラジオチューナー、KENWOOD製のKTF5002を分解します。

これは、近所のハードオフで1500円で販売されていました。

ジャンク品だったのですがかなり状態がよく、FMラジオ、AMラジオ共に音も問題なく鳴っています。

FMラジオが受信できる

AMラジオが受信できる

まずは、このラジオについて調べてみました。

調べると、発売はなんと1997年ごろ。僕の年齢の一つ下です。

価格は25000円とお手頃価格です。

取扱説明書のpdfも上がっていたので下記にリンクを貼ります。

KTF-5002の取扱説明書

下記に仕様を示します。

 

FMラジオの受信周波数範囲は76MHz~90MHz。当時のFMラジオでは十分な帯域です。90MHz以上はアナログテレビの音声信号の帯域でした。現在は、この空いた帯域がAMラジオの補完放送(WideFM)になっています。

全高調波歪率は0.5% オーディオ機器としてはまずまずかなと思います。

個人的に驚いたのは、FMラジオのSN比が70dBであること。当時としてはかなり高い性能ではないかと思います。

また、AMのSN比は40dB。やはりFMよりノイズが多くなってしまうのがAMラジオです。

 

フロントパネル

Auto(自動選局)やスリープ、時間予約などの設定ができるみたいです。

パッと見ボリュームだと思いましたが、これは選局です。ぐるぐる回すことはできず、傾かせるだけです。

後ろはこんな感じ。FMのアンテナ端子、AMのアンテナ端子、オーディオ出力、コンセント、検波出力があります。FMのアンテナ端子はテレビのアンテナ線と同じものです。

それではカバーを外して中身を見てみましょう。

なるほど。複雑かと思いましたが中身は基板一枚に収まっていました。

さらに基板を取り出します。

ざっくりと、回路の名称を示します。

FMのフロントエンド、FMのマルチプレクサ、AMステレオの復調回路、PLL回路、電源回路等、多くの回路から成り立っています。今後のブログにて、これらの回路を一つづつ説明していきます。

今日は、分解したばかりですので、基板全体に着目します。

まず、基板の素材は、紙フェノール基板です。安価で耐久性はあまりありませんが、置き型のオーディオ機器ではこれで十分です。基板は片面一層構造で、部品は片方の面にしかついていません。そのため、線と線の交差のため、ジャンパ線が多く使われています。また、表面実装部品は、裏面についているマイコン(ぶ厚い、、)だけで、あとはすべてディスクリート部品です。部品の足が基板の裏で曲げられているところから、この部品はすべて人の手で手挿入されています。そして、人の手でカットしているのがわかります。

また、はんだづけに一切のムラがないことから、はんだ槽に基板をあてがう、フロー式ではんだ付けをしていることがわかります。マイコンだけは後付けでクリームはんだのリフローかもしれません。

正直これは、今の時代から見ると、かなり人件費がかかっているなと思います。

これを、25000円ぽっきりで売っているのはすごいと思います。

また、電源回路も注目です。

オーディオ関連の機器がやたら重いのは、電源回路にスイッチング方式を使わないからです。スイッチング方式の電源は、たとえば携帯の充電器やパソコンの充電アダプタなどです。このラジオも、スイッチングを使えば回路は軽くなりますが、スイッチングはノイズを多く発生させるため、とくにラジオの電源に使えばSN比は一気に下がります。そのため、大きなトランスを置き、昔ながらの電源回路で作るしかありません。

また、表示はVFDという表示方式です。よく、スーパーのレジで青白い文字で「ゴウケイ2350エン」って出てるアレです。今では液晶表示(電卓などの)や、LEDが多いですが、これは真空管の技術を応用した昔ながらの表示です。

これも、今後のブログで詳しく書けたらなと思います。

最後に、スイッチ類の裏側です。かなりシンプルでした。

今日は、ざっくり分解したレポートでした。今後は、下記の計画で、この製品をより詳しく分析していこうと思います。次回は、9/2にそもそもAMラジオ、FMラジオの受信原理について解説します。PLL、MPXの話も触れようと思います。

現在の連載; 「FM/AMステレオチューナーKTF-5002の分解調査」

更新日      題名          
8/26KTF5002を分解してみた(仕様、解体手順、基板構成、機構について)
9/2AM/FMラジオの受信原理(AM・FMとは、主に使われる受信方式について、PLL・MPXとは)
9/9KTF5002で使用されているICについて調べた
9/16FMフロントエンド回路、FM-IF回路、AM-RF回路 について
9/23PLL回路の原理
9/30FM-AM DET回路について
10/7FM-MPX回路について
10/14Audio AMP回路について
10/21電源回路について
10/28VFD表示回路について

 

2021.8.21 Wiiリモコンを分解した

今回は、wiiリモコンを分解しました。

一時は大人気だったwiiですが、みなさん覚えているでしょうか。

今や、ハードオフで300円で投げ売りされています。

せっかくなので、分解してみることにしました。

さっそく、開封します。

なるほど、まあこんなもんだろうな。

やはり、wiiといえばリモコンの傾きや振ったり、高さや水平移動を検知していました。さて、そのセンサはどこにあるでしょうか。

くわしく見ていきます。

本体上面の裏側にはスピーカーがついていました。

なるほど、ボタン周りはすごくシンプルです。導電体をはりつけたシリコーンのボタンを基板の接点にあてることで、ボタンの役割を果たします。

あとは、振動モーターと、前にCMOSカメラがついていました。なるほど、水平移動などはこのカメラで見ていたのでしょうか。

真ん中にあった十字のボタンは、導電体が4つ。。?と思っていましたが、一つでした。

また、接点が4つです。どの、接点同士を繋げるかで、十字の方向を決めているようです。

ジョイコンをつなげるコネクターは金メッキでした。

また、電源の入力には、ルビコン製の電解コンデンサが入っています。

基板の裏面には、ジョイスティックと通信するためのDTMFレシーバIC(BU8872)や、Wii本体と無線で通信するためIC、BLOADCOM製のBCM2042が搭載されています。また、BCM2042の四隅に、三角のパットがありました。

おそらくこれは、ノイズ試験がうまくいかなかったときに、ここに金属のカバーをつけるためのパットでしょう。

ノイズ耐性がよかったので未実装になっているのでしょう。

また、表面にはEEPROMのようなものがありました。これは、データを保管するメモリのようなものです。最低限の動作を記憶しています。

また、表面の上側に加速度センサーがありました。これでwiiリモコンの傾きを検知しています。

また、近いうちに、これらのICチップを調べて、ブログにできたらと思います。